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「魔性の子」表紙のネクタイカラーは何故変わったのか?⑥

(ネタバレ注意)

 

風の海 迷宮の岸 十二国記 2 (新潮文庫)

 

新版風の海迷宮の岸 の表紙を見ると、人物の構図は三角形として、右に高里(泰麒)、左に汕子、上に驍宗だ。新版の魔性の子では同じく三角形で病んだ汕子、高里、広瀬と並ぶ。これは、高里(泰麒)の保護者が十二国記世界では驍宗であり、現実世界では広瀬であることを示すのではないだろうか。手前の2人は両方を世界を跨いで同一人物だが、上の人物だけ異なる。新版魔性の子の表紙では、広瀬は高里(泰麒)の相棒たる王でない。2人の間に隔たるように汕子がいるのは、別世界の住人への拒絶と高里(泰麒)の保護にも見える。

 

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風の海 迷宮の岸 における汕子は、泰麒の乳母であり、限りない愛情を彼に注ぐ。泰麒の敵が現れたら全力で攻撃して守るし、尊い泰麒を保護するのは当然の役目だ。魔性の子における汕子は、高里(泰麒)の周囲の人間を見えない力で攻撃する、不条理のひとつなのだが、汕子の愛情の裏返しであることを知っている我々読者にとっては、哀れみすら感じる。こんな感じで、イラストレーター山田氏は構図にメッセージを込める、もしくは読者が想像する余地を残す事をしてくれる。そんな細かい仕事をするのだから、ネクタイカラーが変わった事にも意味があるはずだ。

 

 

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やっと核心部にはいるが、高里のネクタイカラーが新版と旧版で異なる理由を以下に列挙してみた。制服ならグレイブルーのはずだ。

 

・血の穢れや泰麒自身への怨詛の象徴

・夕日などの色味で赤色に見える

・実は広瀬のネクタイ

・ただの間違い

・集団飛び降り事件で手首を結んだネクタイ、あるいはその罪悪感の象徴

 

4番目はないと信じたい。

 

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この赤いネクタイを着けた高里が、どの時系列なのか考察したい。新潮文庫を片手にお付き合い願いたい。

旧版表紙のように、彼がスカイグレイのネクタイをするのは通っている高校の制服だからだ。新版p.125の挿絵の高里がつけるネクタイは、周りの生徒と同じ色のようだ。やはり、彼がネクタイをつけるならそれは制服の色だ。途中で自主退学を選んで、わざわざ制服を着る必要もネクタイをする必要もなくなった。その決意をした頃の新版p.383の高里は普段着だ。

 

次に、蝕によって十二国記の世界に帰還する前後を見てみる。新版魔性の子p.479の挿絵において、海岸に佇む彼は制服にしっかりネクタイをしている。白黒なので色は分からない。自身が何者なのか思い出した彼は、延王に会うにあたり、そして帰還にあたり持っている中で最もフォーマルな服を選んだのかもしれない。さらに次に、黄昏の岸 暁の天p.407においては、十二国記の世界に帰還した直後はネクタイをしていない。体は倒れて襟元は腕で隠されており、かなり際どいが、僅かに見える襟元にはネクタイがない。これらのシーンは巻は異なるが、作中の時系列では完全に繋がっている。

 

続く。